和室に座って向かい合うと、切子のぐい呑みを口に運び、うなずきあって微笑む。渡哲也(75才)と吉永小百合(72才)が共演する『宝酒造』の人気CMだ。
「昨年の秋から放映されて1年が経ちました。ですからこの10月にも新CMをスタートさせようと一部では検討されていましたが、渡さんの体調も考慮して、9月30日に年末から流れる分の撮影が行われました」
そう内情を明かすのはある芸能関係者だ。渡が急性心筋梗塞で入院し、緊急手術を受けたのは2015年6月のこと。同年11月に『宝酒造』のCMで現場復帰したが、ドラマは2013年9月の『十津川警部』シリーズ(TBS系)、映画にいたっては2005年の『男たちの大和/YAMATO』を最後に休業状態が続いている。
「渡さんは肺気腫を抱えており、普段の生活では酸素呼吸器の力を借りています。ストレッチやスクワットといったリハビリも行っているのですが、調子が悪いと散歩のための外出すらできない日もあるそうです」(別の芸能関係者)
その渡が2年ぶりに公の取材に応じたのが、CM撮影当日のことだった。渡は吉永を見やって、次のように冗談めかしていた。
「元気になったら、最後の1本は吉永さんとご一緒したいなと思います。大ラブシーンがあるのを」
渡と吉永は、1966年の『愛と死の記録』を皮切りに、これまで9作の映画で共演を果たしている。もし実現できれば吉永との記念すべき「10作目」となり、渡にとっては悲願だという。
「冗談ではなくもう一度映画をつくりたいという思いは強いと思います。それも、倉本聰さん(82才)脚本の作品というものです。これは石原裕次郎さん(享年52)が存命の頃から構想されていた超大作です」(映画関係者)
しかし、病状が一進一退を続ける渡にとって、映画撮影はかなりハードルが高い。
「渡さんは自分の都合で撮影に影響が出るなど本来は許さない人。『宝酒造』は渡さんが30年にわたってCMに出演し、その前は15年以上、裕次郎さんが出ていたほどで、石原プロモーションとは深い信頼関係で結ばれています。それは吉永さんも同じ。だからこそ、今回は無事撮影を乗り切ることができましたが、映画となると話は違う。CMとは比べものにならないほど大勢の人に迷惑をかけてしまう可能性がある。“製作総指揮”のような形で名前を入れることは可能なのでしょうが、現実的には、今回のCMが吉永さんとの“最後の撮影”になってしまうのでしょうか…」(前出・映画関係者)
それでも、俳優・渡哲也の仕事への思いは強い。