潰瘍性大腸炎は厚生労働省の特定難病に指定されており、学生や若年就労層を中心に16万人以上の患者がいると推計されている。この病気は免疫システムに異常が発生し、炎症性のサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)が過剰に生産されることで大腸に炎症が生じ、腹痛や血便を伴う下痢などの症状が起こる。
慢性的疾患でもあり、通常は増悪と寛解を繰り返す。以前の治療は炎症を抑制するステロイド剤や免疫抑制剤などが中心だったが、近年はサイトカインの一つである、TNFαの働きを抑制する生物学的製剤が登場し、長期間の寛解を維持できる患者も増えている。
東京医科歯科大学医学部付属病院消化器内科の長堀正和医師に話を聞いた。
「治療によって症状が治まっていても、実は大腸に炎症が起こったり、持続していることもあります。こうした再燃を早く見つけるためにも、定期的に腸の粘膜の状態をチェックする必要があります。炎症の有無は、従来は大腸内視鏡検査を行なってきましたが、患者さんからすると負担になる検査でした。そこで今年6月に便を採取して検査する、便カルプロテクチン検査キットが保険承認されました。内視鏡検査の補助としての利用が期待されています」
カルプロテクチンというのは白血球から分泌されるカルシウム結合たんぱくの一種で、腸内上皮で炎症が生じると便の中に放出される。腸内で炎症が起こっている時だけカルプロテクチンが検出されるため、潰瘍性大腸炎の病態を把握できる。従来の血液検査に比べ、直接腸の炎症にかかわる物質の便での濃度を測るので、より炎症の有無の確認が的確にできるようになった。
検査は専用の検便容器に自宅で1~3グラム程度の便を採取して医療機関に提出する。専門の検査会社が1週間ほどでカルプロテクチンの濃度測定を行ない、医療機関に戻す。最大3か月に1回の検査が保険適応になっている。