ヒット作で存在感を示した役者たちの“その後”は気になるものである。文字通り、波に乗る、ことも少なくない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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好評を博した前朝ドラ『ひよっこ』。イキイキと個性的な役を演じた俳優たちの存在が光っていました。彼・彼女らは、今クールのドラマの中で、さらに力強い羽ばたきを見せている。ということで、『ひよっこ』組の役者たちが輝く、秋ドラマ3作品をチョイス。
●その1 「時子」が、影のある「香澄」に。『明日の約束』(フジテレビ系)
『ひよっこ』で主人公の親友・時子をイキイキと演じた佐久間由衣さん。明るく前向きな姿が、茨城弁と溶け合って独特な魅力を放っていました。その佐久間さん、秋ドラマでは一クセありそうな役で登場しています。
フジテレビ系『明日の約束』(火曜午後9時)で、佐久間さんが演じるのは白井香澄。不可解な死を遂げた吉岡圭吾の幼なじみ。高校中退でダンサーを目指しつつスーパーのアルバイトをしているという人物。
佐久間さん登場のシーンはまだ多くはないけれど、その目力、秘密を知っていそうな気配、一切笑いを見せないわけありの人物として、インパクト大。強い印象を残しています。ご本人も「時子のイメージを一度壊したい」と、悪女役に意欲満々とか。
『明日の約束』の物語は……井上真央さんがスクールカウンセラー・藍沢日向を演じるヒューマンミステリー。日向が務める学校で生徒・吉岡圭吾が死亡。「この世で一番謎が残る死」として真相が探られていく。
カウンセラーの日向は、実は自分自身も“毒親”のような過干渉母との関係に悩んできた人。2年ぶりにドラマ主演の井上さんは、明るくキャピっとした感じが消えた代わりに、人生の荒波をくぐり抜けてきた厚み、成熟を見せている。緊張感漂う表情と落ち着いた口調が、役にぴたりとはまり好演しています。
脚本はオリジナルですが、実際の事件がベース。ノンフィクション『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』(福田ますみ著)が元になっているだけに、ドラマに漂う緊迫感はただものではない。
「内容が重たい」という感想が聞かれる一方で、「久しぶりに、ながら見が出来ない緊張感」「悲惨な現実を受け止めた上で、乗り越えようとする登場人物の強さに打たれてしまう」と、完成度の高さを評価する声も多い。
というハードな作品の中で、佐久間さんがどんな新しい魅力を見せ、「悪女」として羽ばたいてくれるのか。注目です。
●その2 まさか『ひよっこ』スピンオフドラマ? 『ユニバーサル広告社』(テレビ東京)
一方『ひよっこ』の脚本を担当した岡田惠和氏がトライする『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』(火曜日午後8時)。脚本だけではありません。 主人公のコピーライター役には、『ひよっこ』で記憶喪失のお父さんを好演した沢村一樹が登板。
いや、それだけじゃない。広告会社社長に三宅裕司、喫茶店の看板娘・さくらに和久井映見、ネットオークションで生計を立てる引きこもりの光に、やついいちろうとズラリ。まるでひよこ組のスピンオフ?