相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は、九月場所で序二段優勝した鳴滝について尾崎氏が綴る。
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〈小学四年までピアノを習い、得意曲はTMネットワークの『Get Wild』〉
九月場所の各段優勝者を紹介する記事を読んで「若いのにお目が高い!」といっぺんに序二段優勝の鳴滝(十八歳)を好きになってしまった。なぜなら私もTMネットワーク(以下TM)のファンであるから。ヴォーカル・宇都宮隆のこの秋のソロライブは本場所に重なっていたので行けなかった。TMより相撲観戦を選んだことに「あなた許してください」と秘め事めいた気分になった。
鳴滝は伊勢ノ海部屋の兄弟子、美声で知られる人気力士・勢の演歌にピアノで伴奏することがあるそうなのだが、夢がかなうのならば勢の歌う『Get Wild』を聴いてみたい。きっと懐の深い、あたたかみのある『Get Wild』だろう。
鳴滝の稽古熱心さは伊勢ノ海部屋で一番だ、と部屋付きの甲山親方は言う。そのおかげで昨年十一月の入門から二十キロ体重が減り、六キロ戻っている。ポッチャリから一度絞り込んでそこから付く筋肉は財産だ。新弟子時の写真と見比べても、力士としての自覚もついたのだろう、キリリと引き締まっている。
録画していた優勝インタビューを改めて見る。京都弁がいい。それに右斜め四十五度の顔が、一九八七年頃の宇都宮隆に似ている気がする。「松鳳山関みたいな筋肉マッチョになりたい」と百四十キロを目標にしている鳴滝だけれど、あんまりいかつくなってほしくない……とは勝手な趣味であります。