ここ最近、大人が夢中になる絵本が売れている。なぜ、子供だけではなく、大人まで魅了するのか…。
1年で1万部売れたらヒットといわれる絵本業界で、『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)は、初版4000部からたった1年で約40万部を突破。その理由は、“母の死”という衝撃的な内容で、子供たち以上に、読み手である“ママ”の心を強くつかんだことにあった。作者の「のぶみ」さんはこう話す。
「それまでは、自分が認められたいと思って描いていた時代がありました。でも、7年くらい全然売れなかった(笑い)。小さい頃のぼくは足も遅いし、勉強も嫌い。いじめられっこで集団行動も苦手。子供の頃大好きだった絵本は『おばけのバーバパパ』(偕成社)です。バーバパパはぼくと同じひとりぼっちで、背表紙がなくなるまで読みました。
母は忙しくて、絵本をあまり読んでくれなかった。だからこそ、母子が一緒に楽しめる、忙しいママにも喜んでもらえる絵本を作りたいと思ったんです」
のぶみさんは絵本を作る際、下絵の段階で、たくさんの子供や大人の前で感情いっぱいに気持ちを込めて読み、生の反応を確かめる。それを参考に、大人も子供も楽しめるよう、何度も何度も描き直し、緻密に推敲を重ねる。
「かこさとしさんから、“『どろぼうがっこう』(偕成社)を制作中に子供たちの前で読んだら、とっても大喜びだった”という話を聞きました。読んだ相手が喜ぶことがぼくにとっても大事なこと。絵本はほんの5分くらいで読み終わります。時短で読める本でありながら、その中には笑いあり涙あり、人生の大切なことがいっぱい詰まっている。だから、忙しいママこそ、子供と一緒に笑って、泣いて、喜んで読んでほしい。1冊くらいママが主人公になれる絵本があってもいいと思うんです」
母と子の関係を絵本に描くのぶみさん。『このママにきーめた!』(サンマーク出版)は雲の上の赤ちゃんが、自分でママを選んで生まれてくる物語。
「胎内記憶を持つ子供約100人に話を聞き、ママがうれしい要素も詰め込みました」
そして、『ママがおばけになっちゃった!』のシリーズ第3弾は、『ママがおばけになっちゃった! ぼく、ママとけっこんする!』(講談社)。
「3才で別れた息子が立派に大人になり、ついに迎えた結婚式の日。子育てを頑張っているママにこそ読んでもらいたい」
※女性セブン2017年11月16日号