【著者に訊け】藤岡陽子氏/『満天のゴール』/小学館/1400円+税
「うちの子もそうですけど、子供ってシールやスタンプ集めが大好きでしょう? あれって何かを頑張った証拠というか、自信を集めているんだと思うんです」
藤岡陽子著『満天のゴール』には、医師が往診の度に貼ってくれる〈星の形をしたシール〉が登場する。舞台は京都・丹後半島。宮津駅から更にバスで2時間かかる限界集落では唯一の診療所も閉鎖され、近隣の総合病院に勤務する若手医師〈三上〉の往診に頼るしかない状況にあった。
わけあって実家で暮らし始めた主婦〈奈緒〉と4年生の息子〈涼介〉は、在宅で最期を迎えたい患者のために最低限の治療と看取りを担ってきた彼と出会い、村の老人が集めるその星の意味を知る。痛みに耐えたら1枚、採血したら1枚と星は増えてゆき、ゴールはすなわち死を意味していた。尊厳ある穏やかな死──それはたった一人の医師の努力によっても、叶えられる場合はあると著者は言う。
元新聞記者で、現役看護師でもある藤岡氏にとって、実際に丹後で僻地医療に従事する石野秀岳医師は、以前から注目する人物だったという。