「10月に入って新色が発売されると、陸上競技・ランニング専門店『ステップスポーツ』の各店舗では、『試し履き不可』『一人1点のみ』『購入後サイズ変更不可』といった異例の制約つきで販売され、即完売となる状況でした。ヤフオク!などのオークションサイトでは今も、店頭価格の倍以上となる5万~6万円の値段で取引されています」(西本氏)
その超品薄シューズをすでに駅伝レースに導入し、結果を残している大学が2校ある。ひとつが、王者・青学大の牙城を崩し、出雲駅伝を10年ぶりに制した東海大だ。西本氏は出雲で、東海大の選手たちの足元に起きた異変に釘付けになったという。
「見事なスタートダッシュを見せた阪口竜平選手(2年、1区区間賞)や4区で青学大を再逆転してチームをトップに押し上げた鬼塚翔太選手(2年、4区区間賞)が履いていたのが、大迫選手や設楽選手と同じ、“ナイキの厚底”だったのです。
東海大では他に、アンカーを務めたエースの關颯人選手(2年、6区区間賞)もナイキのシューズを履いていました。よく見るとヴェイパーフライ4%とは形が少し違う、市販されているものとは違うモデルのようなのですが、やはりソールは厚い。
關選手は今年2月に安藤財団グローバルチャレンジプロジェクトで、ナイキが本社を置く米国オレゴン州に行ってトレーニングを積む機会を得ています。面白いのは、オレゴンに行く前の關選手は別のメーカーのシューズを履いていたのに、帰ってきたらナイキに変わっていたという事実です。現地で、市販されていないモデルを何らかのかたちで手に入れたのか、オレゴンを拠点に活動する佐久長聖高校の先輩である大迫選手から何か靴に関してアドバイスを受けたのか、想像は尽きません。
東海大の選手たちは、昨季も5000mや1万mのトラックでは青学大に劣らない記録を出していたが、ロードの駅伝では長い距離の大会ほど苦戦していた(出雲3位、全日本7位、箱根10位)。その意味では、“トラックを走るフォームを維持したまま長距離ロードに移行できる”というナイキの新シューズの特性が最もプラスに働くはずのチームです」