【書評】『リベラルという病』/山口真由・著/新潮新書/760円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
挑発的なタイトルがつけられているが、中身は、リベラルと保守がどう違うのかをきちんと考えた本だ。私は、「保守」は自分のことしか考えない人のことで、「リベラル」は他人のことも気にするお節介だと考えてきた。だから、経済面で、保守は弱肉強食の市場原理主義、リベラルは平等主義を唱え、安全保障面では、保守は改憲、リベラルは護憲になる。
日本の場合はそれでよいのだが、問題は、アメリカのリベラル、民主党がかなり好戦的だということだ。実際、北朝鮮に攻撃を仕掛けようとしたのは、クリントン政権の時だった。
著者は、人間の理性を信じないのが保守、理性で何事もコントロールできると信じるのがリベラルだという整理をする。理性でコントロールできると思うから、リベラルは「間違っている」と思う他国まで、武力で正しい道を歩ませようとするというのだ。
さすがに東大法学部を首席で卒業し、財務省のキャリア官僚になり、日米の司法試験に合格した才媛だ。私は、そうした発想をしたことが一度もなかったし、彼女の主張は強い説得力を持っている。
ただ、本書で気になったのは、日本の財務省が保守のイデオロギーを持っているのではなく、単に政治家に任せていたら膨張する一方の財政赤字に歯止めをかけるべく、嫌われ者を演じているだけだという主張だ。もしそうなら、なぜ財務省は、消費税率の引き上げで庶民の負担を増やす一方で、法人税率の引き下げで、大企業や富裕層を優遇しているのだろうか。