10月26日に文科省が公表した2016年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を受け、新聞各紙にはそんな衝撃的な見出しが躍った。同調査によると、全国の小中高校などにおける「いじめ認知件数」は前年度から約10万件増え、32万3808件で過去最高を更新した。
この文科省の調査によると、児童生徒によるいじめを原因とする自殺は中学生8人、高校生2人の計10人で、前年度から1人増加した。また、いじめにより児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じたり、長期欠席を余儀なくされる「重大事態」は、86件増えて400件に到達した。
《いじめは学校だけでなく、企業やママ友グループ、スポーツチーム、地域コミュニティなど、集団の中では必ず起こりうる現象です。(中略)社会的排除は、人間という生物種が生存率を高めるために、進化の過程で身につけた「機能」なのではないかということです》
脳科学者の中野信子さんは、近著『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)にそう綴っている。
「いじめは悪いことだ」
「いじめはやめよう」
そう声高に叫ばれても、現実、巧妙さと狡猾さを備えてそこにいじめは存在している。ある現役中学教員が明かす。
「昔のように、暴力を振るったり、ものを盗ったりという直接的ないじめ行動は、証拠が残るので少なくなっている印象です。増えているのは、言葉で攻撃したり、無視したりといった精神的なもの。あとは、LINEのグループで本人の知らないところで罵ったり、当初入っていたグループから本人を退会させたりといったスマホやSNSを使ったものも多く見受けられます」
別の高校教員が続ける。
「いじめられている女子生徒の実名を騙ってSNSのアカウントを作成し、そこで援助交際を募集する書き込みがされていたことがありました。住所や電話番号といった個人情報まで拡散されてしまった。直接的ないじめなら被害生徒から話を聞けばいいわけですが、SNSを使ったものの場合には誰がやったか見当もつかない。結局、全校集会などで注意を促すことになりますが、効果は期待薄です」
これまでなら、いじめ被害者には不登校や転校、フリースクールといった「逃げ道」が確保されてきた。だが、日々深刻化するいじめの手段は、逃げることさえできない頑丈な足枷をはめる。