日米をはじめ、これまで及び腰だった中国ですら加わって国際社会が「対北朝鮮包囲網」で連携するなか、韓国だけが相変わらず「対話重視」を掲げている。国際社会を歩調を合わせない文在寅大統領の方針は効果があるのか、元駐韓大使の武藤正敏氏が解説する。
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これまでの文在寅・韓国大統領による対北朝鮮政策には首を傾げざるを得ない。文大統領は今年8月の記者会見で、「レッドラインは北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させ、核弾頭を搭載して兵器化すること」と明言した。
そもそも朝鮮半島有事の際の作戦統制権は米韓連合司令部が握っており、韓国大統領の一存で「レッドライン(越えてはならない一線)」を設定できるものではない。
9月3日の北朝鮮の「水爆実験」後、米韓合同軍事演習が強化されたのを見て、文大統領が述べた「レッドライン」は北への武力行使を決める最後の一線という意味ではなく、対話重視の融和路線から圧力重視の政策に転換するという意味なのだと私は理解した。
ところが、その後も、文大統領の融和政策に変わりはなかった。
文大統領は9月21日の国連演説で、「過度に緊張を激化させたり、偶発的な軍事衝突で平和が破壊されたりしないよう、北朝鮮の核問題をめぐる状況を安定的に管理していくべきだ」「私たちの全ての努力は戦争を防ぎ、平和を維持するためだ」と述べ、いかにも“人権弁護士”出身らしい融和姿勢を強調。アメリカに「北朝鮮を攻撃するな」と要求しているようにも聞こえた。