近未来のある日の午前──検診センターで看護師と向かい合ったあなたは、親指の先をチクリと針で刺された。これだけで年に一度のがん検診が終了した。
「昔はバリウムを飲んで大きな機械でグルグル回されたり、苦しい思いをして胃カメラを飲まされたけど、針を一刺しするだけでがんをほぼ完璧に診断できるなんて、ずいぶん楽な時代になったなぁ」
そんな感慨にふけりながら、家路に着くのだった──。
こんな“がん検診”が実現する時代が確実に近づいている。10月27日、千葉県がんセンターなどの研究グループは、5ccほどの血液からがんを早期に見つける検査法を開発したと発表した。
これまでの研究で、健康な人とがん患者では、血中に含まれるナトリウムやマグネシウムなど『微量元素』の濃度が異なることがわかっていた。この点に着目した研究グループは、17種類に及ぶ微量元素の組み合わせを測定することで、がんの有無や種類を早期に診断することに成功した。
「研究では、膵臓がん、前立腺がん、大腸がん、乳がん、子宮体がんの5つのがんについて、約90%の確率で診断できました。従来の腫瘍マーカーを使った検査の的中率は25~50%にとどまるため、大きな進歩です」(千葉県がんセンター・がん予防センター部長の三上春夫氏)