安倍政権はより磐石になった。だが、約5年の政権運営で積み残した課題があるのも事実だ。今度こそ、それを果たさねばならない。保守の重鎮・田久保忠衛氏(杏林大学名誉教授)が、安倍首相に真の保守政治家としての奮起を期待し叱咤激励する。
* * *
ようやく憲法改正が現実のものになろうとしている。
安倍晋三首相が5月に表明した憲法改正案は、9条1項(戦争放棄)と2項(戦力の不保持)には手をつけず、新たに3項を設けて自衛隊を明記する「加憲」である。命懸けで任務にあたっている自衛隊員に名誉と誇りを与えるためにも、その存在を憲法に書き込むことは当然のことだ。
ただし、2項を残したままの加憲案に対しては保守層からの厳しい批判があり、率直に言えば物足りない。
にもかかわらず安倍首相が加憲を掲げた背景には、公明党が憲法改正に慎重であり、2項を残せば同党からの同意を得やすくなるというギリギリの判断があったのではないか。
だが、自民党が大勝した今、安倍首相には“本来の安倍”に戻ってもらい、加憲ではなく、9条2項削除に踏み込んでもらいたい。
米国が押しつけた現行憲法は武力を放棄するという理不尽なもので、その根本には“Weak JAPAN派”、日本を弱いままにしておくという狙いがあった。