区が区を提訴するという、前代未聞の地域戦争が東京23区内で勃発している。2020年東京五輪の競技会場が予定される羽田空港沖の人工島「中央防波堤埋立地」をめぐって、埋立地に隣接する江東区と大田区は領有権を争ってきた。
今年10月、東京都は江東区に約86%、大田区に約14%を帰属させるとの調停案を示したが、大田区は受け入れを拒否。東京地裁に江東区を相手取って提訴することを決め、小池百合子・都知事も「残念、見守るしかない」と懸念を示した。
大きな関心が集まる両区のバトルに、どこよりも早く注目したのは本誌・週刊ポストだった。
遡ること5年前の2012年11月9日号で「“実効支配”から“強行視察”まで 知られざる『羽田沖領土紛争』」という記事を掲載した。大田区の区議団が埋立地を視察し、「大田区にある中央防波堤」とブログに記載したことに江東区が反発。区の広報誌に1面トップで「埋立地は江東区に帰属すべき」と掲げ、両者の争いがヒートアップする様子を取り上げた。記事は両区の関係者や住民から大きな反響を呼び、以後なぜか4号連続で特集することに。
第2回「『東京ゲートブリッジの屈辱』事件」(11月16日号)では、埋立地にかかる東京ゲートブリッジの開通式で、テープカットの際に江東区長が中央付近に陣取り、大田区長が端に立たされた“事件”を詳報。
続く第3回「生き証人が主張する『わが区の歴史的根拠』」(11月23日号)では、両区の生き字引たちが登場し、「江戸時代から続く海苔養殖の漁場を潰された悲しみが埋まっている」(当時86歳の大田区元自治会長)、「江東区が涙を呑んでゴミの運搬を引き受けた犠牲のもとに埋め立てられた土地だ」(当時87歳の元江東区議)と主張をぶつけ合った。