9月にフランス・パリで開催されたエトランジェ映画祭で、小林勇貴監督は商業デビュー作『全員死刑』(11月18日(土)公開、主演・間宮祥太朗)のプレミア上映後、ティーチイン(解説つき討論会)をおこなった。映画の絞殺シーンを再現するパフォーマンスをすると壇上で客席に参加を呼びかけた小林監督は、及び腰の観客を楽しませようとズボンを脱いで「カモン!」と叫び注目を集めた。一人きりで向かったパリで、なぜあのパフォーマンスが生まれたのか。帰国後、ツイッターでさかんに「オレを炎上させろ」と繰り返していたのはなぜか聞いた。
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──フランスの映画祭から帰国後にツイッターで、からんで炎上させたいなら、オレにかかってこいという内容をつぶやいていましたね。
小林勇貴(以下、小林):ネットで炎上を起こす人たちは、なんでチンピラをいじめに来ないんだと思っていたんです。チンピラのこと、君たち嫌いだろ? いじめたいだろう? ワルがここにいるんだよ。早く炎上させてくれと思っていました。
──呼びかけに反して、炎上しませんでした。
小林:ネットで憎悪の言葉を投げつけて炎上を作り出す人たちは、何か悪を定義して、正義というものをインスタントでつくり、その状態になりたいということだと思うんです。であれば、わかりやすく悪と定義された人間がここにいるだろうとアピールしました。フランスの映画祭でズボン脱いで見せたのに。国辱って言ってくれ! オレを炎上させてくれと繰り返し言ったのに、ちっとも炎上しなかった。こんなに可燃性の高いものはないと思ったんですけどね(笑)
──フランス行きは厳しい道中だったようですね。北京で乗り継ぎできずに振り替え便までずいぶん待たされたとか。
小林:パリ行きは完全に一人きりでした。まず日本から出発が2時間くらい遅れ、飛んでいる最中に次の乗り換え飛行機が飛んでしまった。そんな状態で乗り換え成功するのは、トム・クルーズだけですよ(笑)。最初、北京の空港では航空会社から案内もないので、どうすればいいのか聞きに行きました。すると「ホテルがあります」としか言わない。泊まりたいという話は一切していない。なのにお金が発生すると言われて。乗り換えてパリへ行きたいんだと繰り返しました。北京に着いたのは昼の3時だというのに、深夜2時のパリ行きにしか乗れないことがわかって、仕方ないので空港でひたすら待ちました。
──予定より半日も長い移動になりました。
小林:ほぼ半日遅れでパリについて、日本人の通訳の方が迎えに来てくれて、やっと落ち着けました。これで日本語が話せる、フランス語を訳してくれる人がいる!
──映画祭でのティーチインでのパフォーマンスは、最初から予定していたものだったのですか?
小林:最初から、ズボンを脱ぐことは計画に入っていました。映画を観て感激してくれたお客さんに、どんなことができるだろうと考えていました。たとえば三池崇史監督は、『殺し屋1』(2001年)のトロント国際映画祭(2001年)での上映前にエチケット袋を観客に配って、映画の内容とリンクする仕掛けをしました。こういう試みは、体験した人を映画の世界に連れていってくれる。同じように絶対的に楽しませる何かをしたいと考えました。