それは1か月ほど前のことだった。本誌・女性セブンデスク・Wは毎朝、仕事前に会社近くのドトールコーヒーで1杯のコーヒーを飲むのが日課となっている。その日もいつものようにコーヒーの代金とともにTポイントカードを提示。
おつりとともに手渡されたレシートに、ふと目を向けると愕然とした。これまで長い年月をかけて、コツコツと貯めてきた2万4600円分のTポイントが忽然と消えていた。
ポイント集めが趣味のWは、ドトールでコーヒーを購入する際だけでなく、TSUTAYAでDVDを借りる際、ENEOSでガソリンを入れる際、ファミリーマートで買い物をする際、いずれも財布からカードを出すという一手間を惜しまない。
それは妻に「男のくせにポイント貯めるとかセコい」と揶揄されても決してぶれなかった。貯まったら何を買おうかと考えるのが楽しみだった。それほどまでに大切にしていたポイントが一瞬にして消失…。そのショックは計り知れなかった。
しばらく呆然としていたものの消えたポイントの行方を追うべく、スマホのTポイントアプリの「ポイント履歴」をチェック。すると、2週間前にオークションサイト「ヤフオク!」で2万4600円のアロマオイルランプセットがTポイントを利用して購入された形跡があった。まったく身に覚えのない取引が行われていたのだ。
この日から約1か月にわたるWの「ポイント奪還大作戦」がスタートした。
ポイント制度の先駆けとして2003年にスタートした「Tポイント」、楽天市場でおなじみの「楽天スーパーポイント」、ローソンなどで使える「Pontaポイント」は一般的によく知られるポイントだが、これらは買い物をしたり、サービスを利用したりするたびにポイントカードを提示すれば、100円もしくは200円につき1ポイントが貯まり、ほとんどが1ポイントあたり1円として利用できる。
◆泣き寝入りになるケースが多い
この他にも家電量販店の「ビックカメラ」や「ヨドバシカメラ」のポイントや「JAL」「ANA」のマイルなど、ポイントは多岐にわたる。
野村総研が2015年に行った「生活者一万人意識調査」では、93.9%の人が「なんらかのポイントを貯めている」と回答。また企業も「ポイント○倍デー」といったイベントを開催し、集客に活用するなど、今やポイントは私たちの生活に欠かせないものとなっている。
そんな大切なポイントが危険にさらされている。本誌デスク・Wのようなケースは氷山の一角にすぎない。
今年9月、ビックカメラと楽天のポイント情報を管理するサーバーに、中国籍の男性3人が不正にアクセス、そこで得た他人のポイントでデジタルカメラなど約11万円相当の商品をだまし取った容疑で逮捕された。
昨年7月にも他人名義の楽天ポイント約100万円分を使用したとして中国籍の専門学校に通う女性が逮捕された。彼女は共犯の男性らとともに不正アクセスを繰り返し、盗み取った930万円分のポイントを使用したとして、同年10月に再逮捕されている。元ハッカーでネットセキュリティーに詳しい石川英治氏が語る。
「近年、不正に入手した他人のIDとパスワードを使って、各種ポイントが盗まれる事件が多発。この犯人はネット界で『ポイント窃盗団』と呼ばれています」
利用者が所有ポイントを把握していなかったり、少額のために申告しなかったりするケースも少なくなく、大々的に報じられず、表面化されない事例もある。泣き寝入りする被害者も少なくない。