NHKスペシャルで放送中のシリーズ『人体 神秘の巨大ネットワーク』が大反響を呼んでいる。全8回にわたる大型企画だが、最大の驚きは「臓器間のやりとり」が明らかにされたことだ。
これまで医学界では、「脳」が司令塔となり、各臓器に様々な命令を出して体内をコントロールするという考えが定説で、一般にもそれが常識として受け止められている。
しかしNスぺでは、各臓器は独自にそれぞれのメッセージを携えた物質(メッセージ物質)を放出し、血管や神経を通じてほかの臓器や細胞などと直接やり取りをする「横のつながり」があると伝えたのだ。
番組ナビゲーターの京都大学iPS細胞研究所・山中伸弥教授も、「自分が学生だった30年前にはまったく教わらなかったこと」と、その新発見を評した。
Nスぺでは体内のそうしたシステムを、「臓器間ネットワーク」と定義し、中でも「寿命を左右する要の内臓」として取り上げたのが腎臓だ。番組に出演した自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部の黒尾誠教授が解説する。
「体内に酸素が不足すると、腎臓は『エリスロポエチン(エポ)』というメッセージ物資を放出します。これを骨髄が受け取ると、酸素を運ぶ赤血球が増産されて、酸素が体内に行き渡る。
また血圧が低い時は腎臓から『レニン』というメッセージ物質が放出され、アンジオテンシンIIという物質が生み出されます。これが血管を収縮させて血圧を調整します。骨を丈夫にする『活性型ビタミンD』の放出も腎臓の重要な作用です」