新聞の凋落に歯止めがかからない。かつて朝日新聞は「リベラル紙」と呼ばれ、読売新聞や産経新聞は「保守系メディア」と位置づけられていた。しかし、その紙面は保守かリベラルかではなく、安倍首相が「好き」か「嫌い」かに極端に2極化し、権力の監視そっちのけでバトルに勤しんでいる。そして、ドナルド・トランプ米大統領が11月5日~7日にかけて来日した時は「何を食べたか」の報道ばかりが目立つ有様だった。
新聞・テレビが「社会の木鐸」の使命を見失って久しいとはいえ、ここまで権力監視機能を失ったことはなかった。
いまや政治家のスキャンダル追及は週刊誌に任せ、テレビはワイドショーで面白おかしく後追いするだけ。新聞は権力の顔色をうかがって疑惑が出ても深く掘り下げようとはせず、反対に権力に都合のいい情報しか流さない。
業界的には勝ち組の読売が、安倍首相サイドに立って、加計問題を告発した前川喜平・前文科事務次官の“出会い系バー通い”を報じたことで「権力の手先に堕ちた」と読者の信頼を低下させたことは記憶に新しい。
政策のチェックはなおのことできない。
安倍晋三・首相が消費税引き上げを掲げても、新聞は増税が国民生活にどんな影響を与えるかを検証して報じようとはしない。新聞業界はまるごと「軽減税率」の恩恵を受けることが決まっている。“親アベ”と“反アベ”に対立しているように見えても、業界の利益擁護では一致しているのだ。
だから政権の恫喝にはからきし弱くなる。菅義偉・官房長官は選挙前、テレビ局が国に支払っている電波料が“格安”であることに言及した。