“乗り鉄”で全国津々浦々の温泉を巡り、60年の人生で巡った温泉は400湯以上という本誌記者・オバ記者が、できれば人に知られたくない名湯・秘湯の一部をこっそりご紹介。今回ご紹介するのは、山形のかみのやま温泉の二日町共同浴場だ。
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山形新幹線・かみのやま温泉駅を下車する目的は、ここのお風呂に入って、乗り鉄で痛くなった腰をいたわり、ついでに、誰もいない2階の大広間に座布団を並べて、爆睡すること。思い出せるだけでそれを4回はしている。
共同浴場はあくまでも地元民のためにある、と心得ている私は、地元の人に話しかけられても、これ以上ない愛想のいい笑顔を向けつつ、言葉は必要最小限度。
“よそ者”であることは誰の目にも明らかだけど、それを明かして、波風を立ててはならぬ、と私は思っている。要するに、大きな身を小さくして入っているわけ。それでも常連さんたちの話を聞けるのが面白いのなんの。
ここではない、東北のある共同浴場でのこと。飛び交っている言葉が、まったく理解できなかったの。南東北といわれている茨城出身の私なのに、単語1つ1つがわからなかったのが大ショック。
そこで、湯船の中で体を耳にして聞いていたら、突然、標準語らしき言葉がするーっと入ってきた。
熱弁をふるっていたオバちゃんが、いきなり若い女の口調になって、それが、嫁が姑である自分に向かって吐いた失礼な言葉とわかったときは、心の中で小躍りしたもんね。
いつもいつもこういうドラマが待っているわけではないけれど、それでも、どこで何をしたという地元の人の話はいつも新鮮でわくわくする。
もっと言えば、人様の庭先のようなお風呂で裸になる心細さにヒリヒリすること。それを私は、「旅情」と思っているんだよね。
※女性セブン2017年11月23日号