32年前に公開された伊丹十三監督の名作『タンポポ』は、さびれたラーメン屋の奮闘を描いたコメディー映画だ。日本よりもむしろ海外で高く評価された珍しい邦画としても知られる。
その映画には、後に日本を代表する俳優になる2人の若手が印象的な役柄で出演していた。当時29才だった役所広司(61才)と、26才の渡辺謙(58才)だ。
「役所さんは『無名塾』、渡辺さんは『演劇集団 円』に所属する売り出し中の役者でした。やっとじわじわと人気が出てきたかなという頃。そんな時に、伊丹監督に声をかけられ、海の向こうで喝采を浴びた『タンポポ』に出演したことは、後の2人の“映画俳優人生”に大きな影響を与えたのは間違いありません」(映画関係者)
役所は現在、15年ぶりとなる主演ドラマ『陸王』(TBS系)に出演中だ。ランニングシューズの開発に乗り出す老舗足袋屋の社長を演じる。
「映画に軸足を置く役所さんの演技を肌で感じられるチャンスは滅多にないと、山崎賢人さん(23才)や竹内涼真さん(24才)といった若手出演者たちが、自分の出演シーンではないのに現場に足を運び、じっと見つめて勉強しています」(ドラマスタッフ)
9月公開の福山雅治(48才)主演の映画『三度目の殺人』では、少女を守るために犯した殺人罪で死刑判決を受ける被告人を怪演。ヴェネチア国際映画祭では、世界から集まった映画評論家たちが「ミスター・ヤクショ」を熱心に取材する姿が見られた。
その一方で、日本を代表するハリウッド俳優といえば、「ケン・ワタナベ」の名前は外せない。2003年のトム・クルーズ(55才)主演の映画『ラストサムライ』や、2015年のブロードウェー公演『王様と私』でトニー賞にもノミネートされた。
「海外作品に積極的に出演してきた渡辺さんや真田広之さん(57才)のほうが、“ハリウッドスター”の印象は強いでしょう。役所さんは、英語の作品が多くないので、海外の一般の人に広く認知はされていません。ですが、海外の映画関係者の間では、役者としての技量では役所さんを推す声が多いんです。犯罪者役を演じると、鬼気迫る表情だったり、何をしでかすかわからない底知れない不気味さを醸し出せる俳優だという評価です」(映画評論家の前田有一さん)