NHKスペシャルで放送中のシリーズ『人体 神秘の巨大ネットワーク』が大反響を呼んでいる。全8回にわたる大型企画だが、最大の驚きは「臓器間のやりとり」が明らかにされたことだ。
これまで医学界では、「脳」が司令塔となり、各臓器に様々な命令を出して体内をコントロールするという考えが定説で、一般にもそれが常識として受け止められている。しかしNスペでは、各臓器は独自にそれぞれのメッセージを携えた物質(メッセージ物質)を放出し、血管や神経を通じてほかの臓器や細胞などと直接やり取りをする「横のつながり」があると伝えたのだ。
また、一般的には「臓器」とは捉えられていない体組織も、Nスペは臓器間ネットワークにおいて重要な位置を占めると紹介した。重量にして人体の7割を占める「脂肪」と「筋肉」だ。
脂肪が放出する重要なメッセージ物質が「レプチン」である。東北大学大学院医工学研究科の永富良一教授が指摘する。
「食事をして脂肪細胞に糖や脂肪が取り込まれるとレプチンが放出されます。これが血管を通じて脳の視床下部に届くと、『もう食べなくていい』という指令が出て食欲が抑制されることがわかっています」
11月5日放送のNスペでは、生まれつき脂肪細胞のない「脂肪萎縮症」を患った小児の事例が紹介された。脂肪がないためレプチンが分泌されず、食欲が抑制できなくなっていつまでも食べ物を要求する姿が衝撃的だった。