〈私は6月12日以来入院しております。(中略)9時間もかかる大手術(中略)それまで待てるならば自宅に訪ねて来てください〉
後にわかったことだが、西田は胆管がんを患い、9時間にもおよぶ手術を受け、長期入院していたという。10月、退院した西田を自宅で取材した。
◆「いい加減なことを言わないでくれ」
これまで語ることのなかった妻・ファルディンとの出会い、東芝に入社した理由、社長までの道のり、さまざまな話題を経て、ついに核心に触れた。西田を不正会計の“主犯”扱いした第三者委員会の報告書について聞くと、自らの関与を語気強く否定した。
「いい加減なことを言わないでくれ、と(第三者委員会には言いたい)。僕はね、社長になった時、ここに書いてある座右の銘を肝に銘じてやって来た」
西田はそう言って部屋を見上げた。そこには中国の古典『呻吟語』を著した明代の儒学者、呂坤の「実心 実言 実行」という言葉が掲げられていた。