「当社で発覚した不正会計等について、西田(厚聰)氏、佐々木(則夫)氏、田中(久雄)氏という財務会計の厳格さに対する真摯な認識が欠けた歴代社長によって目標必達へのプレッシャーが繰り返され、短期的利益を過度に追求する方針だったことが問題として挙げられます」
10月20日に公表された東芝の不正会計問題に関する「内部管理体制の改善報告」では、不正に携わった歴代社長が名指しで批判された。東芝にとって彼らはもはや守るべき価値のある存在ではなくなったということだ。
なかでも“最大の戦犯”として槍玉に挙げられたのが、西田だった。西田は、米原子力大手ウェスチングハウス(WH)の買収を手がけ、その結果、原子力事業で7000億円もの特別損失を出した。100億円単位の不正な数字づくりを「チャレンジ」と称し社内に命じた張本人ともされた。
西田は、東京大学大学院で西洋政治思想史を学んだ後、後に妻となるイラン人留学生を追ってテヘランに渡り、東芝に現地採用で中途入社したという異色の経歴の持ち主だ。社長在籍時はカリスマ経営者として脚光を浴び、経団連会長候補とも目されていた。
その西田は、いまや自分が東芝壊滅の戦犯と呼ばれていることを、どう思っているのか。私(児玉博・ジャーナリスト)は西田の取材を進めていたが、本人は不正発覚後、メディアの取材を積極的に受けていなかった。8月半ば、伝手を頼り入手した携帯電話のメールアドレスにインタビューを申し込むと、意外な返答があった。