次々に夫や恋人が死んでいく──逮捕された女は“後妻業”や“毒婦”と呼ばれ、ついに裁判では極刑を言い渡されたが、事件はいまだ多くの謎を残したままだ。一見して“関西のおしゃべり好きなオバちゃん”は、なぜ戦後史に残る殺人事件を起こしたのか。約3年前の事件発覚時から独自取材を重ねてきたノンフィクションライター・小野一光氏が、法廷で明かされた新事実とともに解き明かす。
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交際あるいは結婚した高齢男性に対して、青酸化合物を服用させたとして、3件の殺人と1件の強盗殺人未遂罪に問われた筧千佐子被告(70)。
被害者は京都府の筧勇夫さん(75)、大阪府の本田正徳さん(71)、兵庫県の末広利明さん(79)、兵庫県の日置稔さん(75)で、起訴された4事件のいずれも有罪と認定され、11月7日、検察の求刑通り死刑判決が言い渡された。
この事件で明らかになったのは、短期間のうちに千佐子が資産家の高齢男性を次々に籠絡していった手口だ。
2005年に彼女がとある結婚相談所の自己紹介用紙に記した〈まだ見ぬ人へのメッセージ〉に、このような文面がある。
〈第2の人生に夢ふくらませてます。私の性格は明るくプラス思考で寛容でやさしいです。相手の方への思いやりと尽くすことが私の心意気です。健康管理と明るい家庭が“妻のつとめ”と思います〉