音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、寄席とも独演会とも違う、二人会や三人会といった、複数の噺家による落語会についてお届けする。
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寄席以外の落語会には独演会の他に、二人会や三人会といった「複数の演者が主役」のものがある。9月最終週、僕は二人会、三人会、四人会に一度ずつ行った。
演者Aと演者Bによる二人会のプログラムは「ABBA」「ABAB」「AB」「ABA」の4パターンが考えられるが、「ABA」はAB対等というよりBがゲスト扱いに近く、「親子会(師匠と弟子の二人会)」などでよく見る。2人とも長講の「AB」はトークコーナーや色物などが入ることが少なくない。
二人会の主流は2席ずつやるもの、それも「ABBA」形式が一般的。まずAが軽い噺を、Bがトリネタに準ずる演目をやって仲入り(休憩)、今度はBが軽いネタを振ってAがトリネタで締める。
「AB」型の二人会は演者2人が鎬を削る「激突型」だが、「ABBA」型は組み合わせの妙を楽しみたい。気心の知れた2人の連係プレーが1+1を3にも4にもする。
五代目圓楽一門会の人気者が顔を揃えた9月25日の「三遊亭兼好・三遊亭萬橘二人会」(渋谷・マウントレーニアホール)はまさにそれ。萬橘『堀の内』→兼好『木乃伊取り』→仲入り→兼好『氷上滑走娘』→萬橘『次の御用日』という流れのバランス感覚が絶妙だった。『氷上滑走娘』は兼好オリジナルの新作落語、『次の御用日』は上方落語で、萬橘は先代桂文枝門下の桂枝光に教わったという。