経営再建中の東芝が、昨年6月の白物家電事業に続き、テレビ事業も売り払うことを決めた。売却先は中国の家電大手、海信集団(ハイセンス)グループで、約129億円で譲渡する見込みだ。
これで東芝の消費者向け家電はパソコンやLED電球などわずかしか残らないことになるが、パソコンの売却も時間の問題といわれている。
「パソコン事業は一時、富士通、VAIOとの統合を模索するなど単独での生き残りは難しく、いずれスピンアウトすることは間違いない。綱川(智)社長も宣言している通り、東芝は社会インフラを軸としたBtoB(企業間取引)企業として再生を図っていく以外に道はない」(全国紙記者)
アニメ『サザエさん』のスポンサー降板も噂されているが、国産初の歴史を持つカラーテレビをはじめ、磯野家にも登場する家電製品のほとんどを手放す結果になったのだから、それも仕方ないのかもしれない。
ハイセンスは今後も青森県にある東芝のテレビ生産拠点や国内の販売網、保守サービスなどをそのまま活用する方針だが、なにせ今期を含めて7期連続の営業赤字が確実の不採算事業を引き継ぐことにどんなメリットがあるのだろうか。
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏はこう見る。
「ハイセンスがもっとも重視しているのは『レグザ』に代表されるブランド力でしょう。東芝のテレビ事業はグローバルでどれだけ潜在能力を持っているかは未知数ですが、少なくとも日本では液晶テレビにおける技術力は確かなものがあります。派手さはなくてもポリシーのあるものづくりをしてきましたからね。
一方、ハイセンスは数年前から日本でもテレビを販売してきましたが、現状ではまったく存在感を示せていません。グローバルにおける液晶テレビの出荷台数ランキング(2016年)では、サムスン、LGエレクトロニクスと韓国勢に続き3位に入っているため、バイイングパワーに加えて日本のブランド力を手中に収めることで、トップ企業に迫りたいのだと思います」
いまやテレビは韓国や中国メーカーが安い部品をそれぞれ外部から大量に調達して組み立て、覇権争いをしているのが現状だ。ソニーやパナソニックなどの日本メーカーは、低価格競争から4Kテレビや有機ELテレビといった高付加価値商品の開発に軸足を移して何とか収益を確保している。
だが、「それもいつまで続くか分からない」と話すのは、『経済界』編集局長の関慎夫氏だ。