昨年公開の大ヒット映画『シン・ゴジラ』には、繰り返し鑑賞する熱狂的なファンも多く、先日の地上波テレビ初放送では、放送をみながらツイッターで実況をして楽しむ様子も見られた。ライターの小川裕夫氏が、ゴジラへの攻撃のひとつだった「無人在来線爆弾」に使用された車両が、もうすぐ山手線から引退する事情について追った。
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2016(平成28)年夏に公開された東宝制作のゴジラシリーズ第29作『シン・ゴジラ』は、観客動員数や興行収入の記録を次々と塗り替える大ヒット作品となった。同作には、制作協力で多摩都市モノレール、江ノ島電鉄、東急電鉄、京浜急行電鉄、北総鉄道といった名だたる鉄道会社が名を連ねている。
『シン・ゴジラ』の制作スタッフには、鉄道ファンが多いとも言われている。総監督を務めた庵野秀明氏は雑誌インタビューやイベントなどでたびたび鉄道に言及し、ファンの間では模型鉄として知られる。
また、同作で庵野氏をサポートした監督の樋口真嗣氏も生粋の鉄道ファン。それだけに、作中で描かれる鉄道シーンはマニアたちをも唸らせるほどの高いクオリティに仕上がっている。
これまでのゴジラシリーズで、鉄道は破壊される標的でしかなかった。『シン・ゴジラ』では一転、”無人新幹線爆弾”と”無人在来線爆弾”という攻撃兵器として活用されている。”無人新幹線爆弾”として使用された車両は、東海道新幹線のN700系。そして、”無人在来線爆弾”にはE231系・E233系が充てられた。
E231系とは、山手線や中央・総武線、東海道本線などで走っている車両だ。『シン・ゴジラ』の作中では、現実に走っている鉄道車両が兵器になっている。
映画で大活躍したE231系だが、実は近いうちに山手線から姿を消すことが決まっている。すでに山手線には新型車両E235系が投入されており、随時、新車両に切り替えられるからだ。JR東日本広報部の担当者は、こう話す。
「状況により変更となる場合はありますが、山手線では2017年度中にE235系を15編成投入し、2020年春ごろまでに全編成を置き換える計画になっています」
2015(平成27)年にお目見えした山手線の新型車両E235系は、斬新な顔のデザインが話題を呼んだ。他方、試験運転時にトラブルが頻発したことでも記憶に残っている。
当初、E235系は編成数が多くなかったため、なかなか出くわすことがなかった。登場から2年が経過し、少しずつE235系は増えてきた。いまや、山手線でも当たり前のように見かけるようになっている。すでに、珍しい存在ではない。
一般的に新車両は省エネ性能が増しているほか、振動や騒音が低減しているので乗り心地がよくなる。そのほか、行先表示などがLED化されているので視認性も向上し、利用者にとって便利で快適な、使いやすい車両といえる。
E235系が増えれば、それだけ利用者にとって使い勝手はよくなる。ありがたい話ではあるが、E231系も決して古い車両ではない。なにより山手線の全車両がE231系に置き換えられてから、まだ12年しか経っていない。引退するのは、早すぎる。