地上波テレビの予定調和から脱せるか(イラスト:ヨシムラヒロム)
地上波テレビで繰り返し広告CMが放送されていたAmazonプライム・ビデオの新番組『戦闘車』。甲冑姿のダウンタウン・浜田雅功と、千原ジュニアが叫ぶビジュアルが印象に残っている人も多いだろう。イラストレーター、コラムニストのヨシムラヒロム氏が、ネット番組だからこそ期待されることと、テレビ的な番組構成について考えた。
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約1年前、Amazonプライム・ビデオの会員になった。いや、無料体験30日の解約を忘れた結果、なっていた。これが正確。
当初、夢中になったのが「ドキュメンタル」松本人志が主催する芸人達のにらめっこ大会だ。そして、今さっきまで見ていたのが『戦闘車』。
松本から遅れること1年、相方の浜田雅功が遂にAmazonデビューした作品。
『戦闘車』は、読んで字のごとく”車が戦う”番組。浜田率いる浜田軍8名、千原ジュニア率いる8名がカーバトルを繰り広げる。
出演者全員が命懸けで様々な試合に挑むデンジャーテイメント (デンジャー×エンターテイメント)。
こんなキャッチコピーを謳われれば、期待も上がる。放送前からAmazonプライム・ビデオのページには、甲冑をまとった浜田とジュニアのバナー広告。他の動画をみるたびに流れる『戦闘車』のCM。
タレントが運転する車と車がぶつかり合う、地上波では絶対に不可能な絵面。配信日を指折り数えていた。
10月6日、第1話「集結」が公開された。そこで分かったのが甲冑をまとった理由、単純に戦闘するわけではない。下記の舞台設定で戦うのだ。
平成二十九年、富士の裾野に豪華絢爛、艶やかで煌びやかな城が一夜にして築かれた。その要塞を守るのは潤沢な資金でかき集められた南蛮渡来の戦闘車8台。そんな常勝軍団を率いるのは若き武将・千原ジュニア! 一方、千原城築城の噂をききつけた、ナニワのドスケベ大将浜田雅功率いる浜田軍は、千原城を落とすため純国産車を中心とした戦闘車を率いて進軍を開始(原文ママ)。
よーするに、浜田軍の国産車VSジュニア軍の外国車という構図。時折、甲冑をまとった浜田とジュニアのコントがはいる。
この2つが見ていてキツかった。
全5話で4競技を行う、そのたびに使用する車の説明がはいる。1度なら良いが、しかし毎度となるとたまらない。ナレーションの文言は同じなので、すでに知ったカー情報を何度も聞くハメに。
「メルセデス・ベンツ S320。Sクラスはベンツのフラッシグモデルで誰もが憧れる最高のラグジュアリーカー」
コチラは早く勝負が見たいのに、上記の解説でイチイチ中断。よって番組のリズムが崩れる。亀田興毅の世界戦並みに試合が始まらない。
そして、甲冑をまとう戦国的な舞台設定の意味のなさよ。あくまでも番組のスパイスであるトリッキーな設定が「戦闘車」では全面に出過ぎ。これまたイチうるさい。
千原「この城は何人たりとも崩せまい!」
浜田「その城、落としに行くぞ!」
と、2人が繰り広げるコントもおざなり。視聴者が気まずくなるクオリティの低さに辟易。そして、演者の2人が萎えていることが画面を通してわかる。
“国産車と外国車が戦う”優れたコンセプトは、2つのマイナス要素によって相殺。結果『戦闘車』は並の番組に仕上がった。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の興奮とは言わないが、新たなカーバラエティのあり方を提示する可能性は十分あった。それだけに残念で仕方がない。