香港のトップである行政長官を今年6月末まで務めた梁振英・中国人民政治協商会議(政協)副主席が今月初旬、香港で行われた講演で、「国家による殺人は法を犯したことにはならない」などと発言したことが明らかになった。米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は「アッと驚かせるような意見を時々開陳する梁氏だが、今回は本当に驚いた」と報道。VOAの書き込み欄には梁氏に対して批判的なコメントが多数掲載されている。
梁氏は香港返還20周年を記念する「国家と香港」と題するシンポジウムに来賓として出席し、前行政長官として講演を行った。席上、梁氏は「香港の若い世代は国家という概念を正確に把握すべきだ。国家は人類社会の最大の利益集団である。国防や経済、あるいは大規模なスポーツ競技大会も国家の名義で行われる」と述べた。
そのうえで、梁氏は「古来、古今東西で罪と罰の概念は存在してきた。個人が殺人を行えれば、法に触れ、罰則が下される」と前置きしながらも、「だが、それには唯一の例外がある。それは、国家による殺人が行われたとしても、法を犯したことにはならないということだ」と主張した。
ネットでは、「第2次世界大戦中にナチスドイツなどの国家が起こした総計600万人を超す虐殺も正当なのか」「北朝鮮の歴代政権、イラクのフセイン政権、リビアのカダフィ政権のほか、中国共産党政権による民主化運動活動家や宗教団体、少数民族への弾圧は正しいのか」、などの反論が相次いでいる。
また、梁氏は同じ講演で、参加している聴衆に触れて「中国」の「国」とか「中華」の「華」という文字を使った名前が多いことから、このシンポジウムは「愛国者の集まりだ」とも発言しているが、これについても異論が噴出。「梁振英の名前は『英国を振興する』の意味合いだ。愛国者と自称していいのか」や、香港の民主派議員で、中国大陸の中央政府を侮辱したなどとして議員資格をはく奪された梁国雄氏について、「梁国雄は、国という字が付いているから『国家の英雄』として大いに賞賛すべきだ」とのコメントも寄せられている。