洗濯の依頼を受け、衣服を預かるときに、保管期間を明示して条件にすることは有効です。なぜなら期限を過ぎて取りに来ない場合、注意義務が自分の物と同じ程度に軽減されるからです。また、クリーニング業者の協会では、「クリーニング事故賠償基準」を定めています。この基準は、汚れや脱色、さらには紛失などの事故についての補償を定めたものです。
その中に、クリーニング業者が洗濯物を受け取ってから、1年を経過すれば基準による賠償の支払いを免れるとの条項があります。つまり、1年以内に引き取りに来なければ紛失しても、業者には責任がないということになります。
こうした条件を、洗濯物を預かる際、顧客に説明しておけば有効な契約条件になります。ただし、店は勝手に処分できず、紛失しても責任がないことにとどまります。あなたも保管の限度を1年と明示して、顧客から洗濯物を預かり、その上で保管期間を超え、保管が難しくなれば競売手続きを利用するのがよいと思います。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年12月1日号