ビジネス

なぜ日本人は賃貸自由主義より35年ローン地獄を選ぶのか

「35年ローンはリスクだらけ」と榊氏

 マイホームは「持ち家」と「賃貸」のどちらがトクか──。これまでも散々繰り返されてきた議論だが、「特にこれからの時代は、リスクを背負ってまで買うべきではない」と断言するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。果たしてその根拠とは?

 * * *
 私は、日本人には住宅についてのある強迫観念が存在していると考えている。それは、「一人前になったら家を買わなければならない」というものだ。仕事を持ち、結婚して、子どももできた一人前の職業人が、いつまでも賃貸住宅に住んでいると、世間から「どうして?」と思われる。

 まわりを見渡してみよう。しっかり仕事をしていて、それなりの家庭を築いている人のほとんどは持ち家に住んでいないだろうか。そういった人で賃貸暮らしを続けているのは少数派である。

 しかし、自宅というのは必ずしも購入しなければならないものなのか? 私は常々疑問に思っている。

 住宅というのは、人が暮らすための器である。雨風をしのぎ、安寧と安眠の場所を提供する場所だ。できるだけ快適で、手足をゆったりと伸ばせて、圧迫感を抱かない程度の広さがあればよいのではないか。仮に一般人が宮殿のような住まいを手に入れても、維持管理に困るだけだ。

 特に今の日本は人件費が高い。家事を手伝ってもらう人を雇う、というのはよほどの富裕層でない限りは不可能。そうなれば、一人当たり30平方メートルから50平方メートルくらいの広さがちょうどいい。掃除や手入れも行き届く。また4人くらいの家族で暮らすならせいぜい100平方メートルだ。それ以上になると、清潔な状態を維持するだけでも相当の労力を必要とする。

 つまり、今の一般的な日本人の必要とする住まいは、さほど広くない。そして、この国では住宅自体が余っている。日本全体で13%余りの住宅が空き家になっていて、それは今後どんどん増えることが確実視されている。

 さらに言えば、住宅は余るわけだから資産価値は低下していく可能性が高い。現に、日本全国で住宅を含めた不動産の価格は下落している。不動産の価格自体が上昇しているのは、東京や神奈川、京都や大阪、仙台、福岡といった特殊な事情がある一部の地域の、限られた場所だけである。その他の不動産はほとんどが、その資産価値を落としている。

 中には、誰も所有したがらない不動産も多い。日本全国で所有者不明の土地が九州と同じ面積分だけあると言われている。

 不思議なのは、こういう時代でも35年ローンを組んでマンションを買おうとしている人が多くいることだ。なぜそのようなリスキーな買い物をするのか、私には理解できない。

 今後、日本では人口減少とさらなる少子高齢化が進む。移民政策を大転換でもしない限り、この国の住宅需要は減り続けるだけだ。絶対に増えない。増えないということは、その価値も高まらない、ということになる。

 カンタンに言えば、不動産の資産価値は下がり続ける。もっとあからさまに言うと、35年ローンで購入したマンションの市場価格が購入時よりも上がる、ということはマイナス金利になったり、年率5%以上のインフレにでもならない限り起こり得ないのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン