日本に“出稼ぎ”に来る技能実習生(*)の失踪が年々増えている。その大半を占める中国人失踪者はこの5年で1万人を超えた。彼らはどこへ消えたのか。日本に滞在する中国人の動向に詳しい元警視庁北京語通訳捜査官の坂東忠信氏が解説する。
【*日本国内で一定期間働き、産業上の技能等の習得を目指す「外国人技能実習制度」を利用して日本を訪れた外国人労働者をこう呼ぶ。これまで最長3年だった期間が、2016年の法改正で2年延長できるようになった。】
毎年、約8万人の技能実習生(以下、実習生)が中国や東南アジアから日本にやってくる。ところが、実習期間の途中で行方不明となるケースが年々増え続けており、2015年には5803人が失踪。過去最多を記録した。その多くを占めるのが中国人だ(3116人)。
実習生が失踪する背景として、技能習得を掲げながら低賃金の単純労働を担わせる受け入れ側の実態や、そもそも出稼ぎ目的で来日する実習生側の問題などが指摘されている。どんな理由があるにせよ、実習現場から失踪すると、その後には在留資格を喪失して強制帰国となるか、不法滞在者となるしか道はない。
そんな彼らの“合法的”逃げ道の一つと考えられるのが「難民申請」である。
近年、難民認定を申請する外国人が急増している。2012年に2545人だったものが、2014年5000人、2015年7586人、2016年1万901人と、実習生の失踪者数増加に呼応するように激増しているのだ。