暗記重視の歴史教育を見直す動きによって、坂本龍馬が高校日本史の教科書から消えるかもしれない事態になっている。
「正直言って驚きました。坂本龍馬は近現代史でもっとも人気がある人物だと思っていますし、国難に殉じた人たちを“こっちは削ってこっちは残す”だなんて、一体、何の権限があってやっているのでしょうか」
そう話すのは、坂本龍馬の末裔(龍馬の兄・権平の子孫)で、郷士坂本家10代目の坂本匡弘氏。近い将来、“龍馬の名前が歴史教科書から消えるかもしれない”という一報に、落胆の色を隠さない。
11月中旬、高校と大学の教員らで構成する「高大連携歴史教育研究会」(会長=油井大三郎・東大名誉教授)が歴史用語の「精選案」を発表した。同会は、大学入試や高校の授業が暗記中心になり、教科書の収録用語が膨張傾向にある問題を指摘。用語を現在の半分程度に減らすよう提言した。
この提言では、幕末の英雄・坂本龍馬も削除候補に含まれていた。末裔の匡弘氏は納得のいかない様子だ。
「そもそも日本の歴史教科書は、近現代の基礎を作った幕末維新期の記述が薄いように感じます。龍馬についても“薩長同盟を取り持って、大政奉還に導いた”というくらいしか教えていないでしょう? 自分が中高生の頃、どうしてもっと詳しく書かないのか、不思議に思っていましたよ」
歴史教科書を読んで、“もっとウチのご先祖様のことを詳しく書いてほしい”と感じる──偉人の末裔しか抱くことのできない感情だ。それが詳しくなるどころか、名前ごと消えてしまうかもしれないのだから、匡弘氏はヒートアップしていく。
「龍馬をはじめ幕末の志士たちは、西洋列強の属国となりかねない危機をいかに乗り切るかに心血を注ぎ、命を捧げた人々です。そうした日本の成り立ちにかかわる歴史は、むしろ高校でもっと、きちんと教えるべきではないでしょうか」