米経済誌「フォーブス」が発表した2017年の中国の長者番付でトップに輝いたのは広東省の不動産デベロッパー「中国恒大グループ」会長の許家印氏だった。許氏の長者番付1位は初めて。
昨年トップだった「大連万達(ワンダ)グループ」総帥の王健林会長は4位に甘んじた。中国政府による外貨の海外流出規制により資金繰りが悪化し、中国全土の不動産資産を投げ売りしたことで、資産が大幅に減少したことが原因。王氏は今年8月、天津国際空港でロンドンに向かう直前、政府当局から外貨流出に関する取り調べを受けたとされ、銀行から資金融資がストップしたことが痛手となった。
中国の場合、政府との良好な関係がビジネスにも直結するだけに、その逆の場合、不正の嫌疑をかけられて、逮捕、投獄されたビジネスマンは数知れない。それだけに、ビジネス界は常に政治的な圧力によってさらされている典型例といえよう。
今年の1位の許氏の資産は2813億元(約5兆円)で、1600億元だった昨年の資産額よりも1200億元も増加した。これは新首都圏構想である河北省の「雄安地区開発プロジェクト」の不動産開発事業を請け負ったことが大きな要因と伝えられる。
プロジェクトは習近平国家主席の肝いりで進められており、北京に隣接する河北省の広大な土地に最終的に2000平方kmもの副都心を建設し、今後20年間の投資額は4兆元(約70兆円)規模に上る巨大プロジェクト。
許氏はビジネスマンという顔のほか、「広州恒大」というサッカーチームのオーナーでもあり、サッカー好きの習氏と親密な関係を築いているといわれる。そうした個人的な関係を利用して、ビッグプロジェクトに参入したとの噂が根強い。