独特とされる食文化、センス、言葉遣いなどが他県からいじられ続け、ついに「もっとも魅力のない都市」に選ばれてしまった名古屋。不思議なことに、名古屋人までが世間の「名古屋ぎらい」に同調する向きすらある。そんななか、名古屋生まれ名古屋在住の評論家、呉智英氏が立ち上がった。郷土愛からではなく、知識人として、名古屋について流布する「俗説」が許せないというのだ。『真実の名古屋論』(ベスト新書)を上梓した呉氏が、名古屋ぎらいの正体を暴く。
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十一月十八日放映のNHKテレビ『ブラタモリ』は名古屋地区の視聴率が十七%に達した(関東地区は十二%)。ものづくり都市名古屋がテーマであった。六月にも二週連続で名古屋が取り上げられ、やはり好評だった。今回はその続篇に当たる。
名古屋地区で特に好評だったのは、タモリの“名古屋いじり”がよく知られていたからである。名古屋人は「エビフリャー」が大好きなどと、しばしば名古屋をからかっていた。消費動向調査にそんな結果は出ていないのだが、エビフライごときを御馳走だと思う貧乏臭さという比喩が面白がられた。しかし、当然、いじられた名古屋では反撥があった。もっとも、名古屋のレストランではこれを逆手にとって、名古屋名物エビフライと宣伝した。なかなかたくましい商魂ではある。
こうしたいきさつがあったため、タモリが名古屋と和解などと、番組は盛り上がった。
タモリは『笑っていいとも!』で国民的お笑いタレントとなったが、その前は差別ギリギリのブラックユーモア芸でマンガ家やジャズメンに評価される存在だった。タモリの心中には、偽善的ヒューマニズムへの嫌悪感があったのだろう。
しかし、タモリとは少しちがった意味での名古屋イジメが一九九〇年代から始まり、実に今に至るまで続いている。なんでもいいからケチをつけてからかうという点で、イジメそのものである。イジメの多くは誤解や無知に基づいており、冷静に考えれば根拠がない。名古屋イジメもほぼ全部が無根拠のトンデモ説である。そうした名古屋イジメをする人たちの心の中にはブラックなルサンチマン(怨念)が感じられる。