野球への未練を断ち切れない“戦力外”選手が、一縷の望みを抱いて挑むのが、12球団合同トライアウトだ。今年(11月15日)は51人が参加したが、新天地が見つかるのは例年、数人である。
野球にしがみつこうと幾度もトライアウトを受験する選手がいる一方で、すっぱりと現役に見切りを付け、社会に出る者がいる。その一人が甲子園の元スターで巨人の“ドラ1”という金看板を背負った辻内崇伸(29)だ。
「ずっと男の世界で生きてきた自分が、いきなり女子の世界に飛び込んで戸惑うことばかりでした。それこそ、名前を呼ぶ時に、どう呼んだらいいのかなって。今では苗字を呼び捨てにしていますけど最初は判断がつかなかった。トレーニングを課すにもどこまで追い込んだらいいのか……」
2013年に戦力外通告を受けた辻内は、トライアウトを受験することなく女子プロ野球を運営するわかさ生活に就職。現在は埼玉アストライアのヘッドコーチを務め、11月5日には女子野球ジャパンカップを制した。
「女子プロ野球事業部に配属され、午前中はコーチ業、午後は球団事務所でデスクワークをしたり、オフィシャルスポンサーをお願いしに回ったりしています。女子プロ野球の発展のための仕事です。年々、レベルが上がってきていて、リーグ自体が成長しているという実感がありますね」
大阪桐蔭の左腕エースとして甲子園を沸かせ、2005年のドラフトで巨人に1位指名を受けて入団。しかし、ルーキーイヤーから左肩の痛みに悩まされ、最初に「15」だった背番号は「39」「98」と、大きな数字に変わっていった。