あなたはどこで、どんなふうに死にたいですか? そう問われたら、すぐに答えられますか。現在、生き方、死に方を綴って、ともにベストセラーとなっている在宅医療のドクター・小笠原文雄さん(『なんとめでたいご臨終』・著者)と脚本家の橋田壽賀子さん(『安楽死で死なせて下さい』・著者)が初顔合わせ。生き方・死に方を考える対談を行った。
橋田:ほんと、人間いつどんな病気になるかわかりませんね。私は今、週に3日、毎回1時間、個人トレーナーについてスクワットや腕立て伏せなどの運動をしてるんです。それは長く生きようということではなく、残った人生の時間を元気で遊び尽くそうと思って(笑い)。
小笠原:いいですねぇ。どんな遊びですか?
橋田:旅です。大型客船に乗って、100日以上かかる世界一周の旅に出る。これまで3回世界一周をしました。若い頃は戦争があって、どこへも行けなかったんです。終戦のときがハタチ。それだから旅への憧れがすごい大きい。でも船は、半端じゃないお金がかかるんですよ。
小笠原:いくらくらいですか?
橋田:世界一周するのに3000万円近くかかります。
小笠原:えっ、3000万円!?
橋田:要は2人部屋を1人で使うので、2人分とか1.5人分のお金を払わなきゃならないんです。でも安楽死が認められないと、将来どれくらいのお金が必要になるのかわからない。心配で、お金を旅行につぎ込めないんですよ。
小笠原:死ぬのにそんな大金はかかりませんよ。年金7万2466円で、安らかに旅立ったひとり暮らしの女性もいます。ただこの金額では、夜間ヘルパーを頼むのは無理なので、朝までぐっすり眠る睡眠薬を点滴しました。「夜間セデーション」といって、夜だけ“眠れる森の美女”になっていただくわけです。
橋田:私は“眠れる熱海のおばあちゃん”ですけどね(笑い)。私には遺産相続者がいません。死んだらお国が持っていきます。だから私は、自分で稼いだお金は全部使い切って死にたい。エゴイストですか? 私は年々意地が悪くなって、欲張りになってるんです(笑い)。お金を病気や介護費用につぎ込むのはイヤなんです。楽しいことに使いたい。
小笠原:なるほどねぇ。体が動くうちに人生を遊び尽くす。年齢に関係なく、素敵な考え方ではないですか。死を自覚すると、どう生きるのか、自分はどう生きたいのかがよく見えてきます。