国際社会が「対北朝鮮包囲網」で連携するなか、韓国だけが相変わらず「対話重視」を掲げるのは、人権派弁護士のまま大統領となった文在寅氏の影響が大きい。もっとも、大統領ひとりだけが対話を掲げるのであれば現実的な路線もとれるだろうが、現在の韓国政権中枢は親北派が重用されていると元駐韓大使の武藤正敏氏は指摘する。
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盧武鉉政権時代、大統領と同じ人権弁護士として「対北融和路線」すなわち「太陽政策」の主要な担い手だった文在寅氏。大統領になってからは自身の政権スタッフにも“北朝鮮通”を重用している。
その筆頭は、大統領秘書室長に指名した前ソウル副市長の任鍾ソク(イムジョンソク)氏だ。任氏は民主化運動が盛んだった1980年代、学生全国団体の議長を務めたゴリゴリの左翼運動家だ。金一族の支配を正当化しているとの指摘がある北朝鮮独自の国家理念「主体思想」に共鳴する人物としても知られる。
大統領直属の情報機関・国家情報院トップには、北朝鮮情勢の専門家・徐薫(ソフン)氏を抜擢した。徐氏は、国情院に28年間勤めたベテランで、実務者として2000年と2007年の2回の南北首脳会談を成功させた人物である。とくに2007年の会談では北朝鮮側との秘密接触を任され、対北対話のエキスパートと評価される。金正恩委員長の父・金正日総書記にもよく知られた人物だったという。
南北統一を主管する統一部長官には、キャリア官僚出身の趙明均(チョミョンギュン)氏を据えた。趙氏は1984年から2008年まで24年間、統一部で勤務したベテランだ。2001年から北朝鮮との交流協力局長を務め、3大経済協力事業とされる開城工団事業、鉄道・道路連結事業、金剛山観光事業を軌道に乗せた。2006年から2008年まで、盧武鉉政権下で青瓦台(大統領府)での勤務経験も持つ。大統領秘書室・安保政策秘書官の要職を務め、2007年の南北首脳会談の実現に貢献、同席もした人物である。