親族が急死した際、交友関係を確認するためにメールをチェックすることもあるだろう。しかし、亡くなった夫のメールをチェックして、不倫メールが見つかった場合、相手に慰謝料を請求できるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
姉の夫が急死。1か月後に姉が夫のスマホを確認したところ、部下との不倫メールが発見されてしまったのです。文面を見ると3か月前に別れたようですが、姉の怒りはすさまじく、相手に慰謝料を請求すると息巻いています。ただ、証拠はメールしかありませんし、それでも姉は請求できるのでしょうか。
【回答】
配偶者の不倫の相手が、不貞配偶者の相手方配偶者に対して負う不法行為責任は、請求時点で不倫行為が継続している必要はありません。また、不貞配偶者が死んで不倫がなくなっても、生前の不倫相手の責任が、当然になくなるものでもありません。
相手が結婚していることを承知の上で関係を持てば、「(不倫をした)第三者は、故意または過失がある限り、配偶者を誘惑などして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある」というのが最高裁の判断となります。
相手に配偶者がいることを知りながら肉体関係を持てば、それだけで不倫相手の配偶者の権利侵害の不法行為になり、慰謝料支払い義務を負います。しかし、結婚生活が破綻している相手との関係では不貞にはなりません。