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臨床心理士が読む 引退会見に臨んだ日馬富士の深層心理

日馬富士なき今後の角界の行方は?

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、引退会見での日馬富士のメンタリティを詳細に読み解く。

 * * *
 渦中の横綱日馬富士が引退した。貴乃花部屋の平幕、貴ノ岩への暴行問題が明るみに出てから約2週間。未だ貴乃花親方は口をつぐんだまま何も語らず、被害者の貴ノ岩は姿を一切見せていない。警察の捜査や日本相撲協会の調査も続いている中、自ら引退を決意した日馬富士の心中は複雑だったようだ。

 福岡県太宰府天満宮で開かれた引退記者会見。目を赤くし涙ぐんだまま会見場に現れた伊勢ヶ濱親方の後ろから、硬い表情で暗い目をした日馬富士が入ってきた。薄いモスグリーンの着物に、金茶のような山吹色の袴。晴れやかな引退会見であれば、袴の色が際立ち、明るく鮮やかに感じただろう。だがこの日は、色付いた枯れ葉のようにどこか寂しさを感じさせた。

 会見冒頭、親方の「残念でならない」という言葉に目を伏せた日馬富士。「申し訳ありませんでした」という親方の言葉とともに、20秒以上も頭を下げ続けた。その長さに騒ぎを起こした事への申し訳なさだけでなく、諦めきれない相撲への想いが透けて見えるようだった。

 マイクを手に、時おり視線を下に落としながら謝罪の弁を述べた。「引退はいつ判断したか?」という質問には、すぐに答えが出てこない。視線を前に向けると、クッとあごを上げたが、さらに間があく。言葉にしようとして言葉にならないのか、身体を微妙に揺らし、喉の奥で軽く咳払いをして、2度3度と口を開いては閉じたのだ。簡単には言葉にできない何かが、まとめきれない自分の感情がそこにあるようだ。

「このことがマスコミに知られ、騒ぎが大きくなって…」と述べた。強張りながらも落ち着いた表情で話しているが、精神的にはかなり動揺しているのだろう。「横綱として責任を持ちたい」と唇をきつく巻きこんだ。その仕草から、苦痛や不安、ストレスが強いことがわかる。

 会見中、「自分のした事で騒ぎを起こしてしまい申し訳ない」「ファンや関係者に迷惑をかけて申し訳ない」という度に身体をかすかに揺らし、目を伏せ、頭を下げていた日馬富士。だが貴ノ岩の話をした時だけは仕草が違っていた。

 事件について聞かれても日馬富士の身体は揺れず、視線を下に落とすこともない。答えながらも前を見たまま、目を伏せることはなかったのだ。「先輩として礼儀を正す」「弟弟子を思った上での事が、行き過ぎた」と言って、唇を巻きこむようきつく口を結んだものの、顔は上げたままだ。

「貴ノ岩関に思うことは?」との問いに、視線を上に向け考えをまとめるような仕草を見せたが、やはり目線を落とすことはない。「ケガを負わせて、心も傷ついていると思う」と彼の状態を心配し、「礼儀と礼節を忘れず頑張っていただきたい」と締めくくると、長くフーッと息を吐いた。答えながら高まってきた緊張や感情を抑えようとしたのだろう。

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