ラーメンが国民食であることはもはや論を俟たないだろう。一方でラーメンは現在も日々進化を続けている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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ラーメンがいよいよ多様になりつつある。実はいま僕は、「WRGP=World Ramen Grand Prix」という創作ラーメンの大会の審査員として大阪に来ていて、ホテルでこの原稿を書いている。昨日(11月30日)、決勝大会の1日目があり、今日が2日目。452名(杯)のエントリーから決勝大会に進んだ16人(杯)のラーメンが各日8杯ずつ、2日にわけて実食する審査が行われている。
ラーメンはいつの時代もブームやトレンドに支配されてきた。ブームの黎明期は「荻窪ラーメン」「環七ラーメン戦争」など限られた立地と味が密接に結びついていた。だがその後、ご当地ラーメンブームの後あたりから、ご当地色は薄くなってきた。近年では全国どこでも「二郎系」のラーメンや、低温調理チャーシューにもありつける。地域と丼の中身の相関関係はなくなった。
ここ最近、スープや麺といった”ラーメンの根幹”に手を入れた期間限定メニューを出す店や、レギュラーメニューでも味を変え続ける店が増えている。そうした傾向が今回のWRGPにははっきりと現れていた。
今回の大会では「LIMIT600 from Nippon」というテーマが掲げられていた。もちろん決勝大会に残った16杯も「総カロリー600kcal以下」「日本を感じる」丼がそろっていたが、そこにもやはり「いま」が映し出されていた。
ひとつはスパイス&ハーブの可視化である。初日には味の骨格に和山椒の実を使ったラーメンが複数あった。山椒は今年、一定ブレイクしたとも言えるが、他にも沖縄のヒバーチなど、単なる胡椒とは異なるスパイスを使ったラーメンがあった。ハーブも同様で、山椒の葉や三つ葉、なかにはディルや緑茶を使ったラーメンもあった。
次に酸や柑橘を味に盛り込む傾向だ。象徴的な「ゆず塩ラーメン」もあったし、カットレモンを添えたラーメンが2、すだち添えが1。そのほか、具のナスの揚げ浸しにシークワーサーを使った一杯もあった。さらには巻きずしに見立てた「ラーメン寿司」は茹で上げた麺をすし酢に20分漬けるという大胆な手法で審査員を驚かせた。