私(53才記者・女)が自分の更年期をいちばん実感するのは睡眠である。以前は体の疲れや悩みがあっても“ひと晩寝れば”リセットできる健康体。
徹夜もできるし、どこでも短時間でも眠って復活できる。力の源が睡眠にあると感じていた。それが今は、夜中に目が覚め、深く眠れず疲れが取れなくなり、あらゆる更年期障害の源になっている感じがするのだ。
そして高齢者の多くもまた睡眠の障害に悩まされているという。老親と介護する子世代の両方が、睡眠の悩みを抱えている。
そこで東京医科大学睡眠学講座教授で、睡眠総合ケアクリニック代々木理事長の井上雄一先生に、よい睡眠のコツを聞いた。
「人の体には体内時計と呼ばれる体内リズムがあり、これに従ってさまざまな体の機能がリズムを刻んでいます。たとえば血圧や体温、メラトニンと呼ばれる睡眠を促すホルモン分泌などが体内時計に大きな影響を受けていますが、“夜眠って日中活動する”というサイクルとともに、これらが体内リズムに従って変動します。
高齢になると、このリズムの振幅が小さくなるのです。つまり、眠りと覚醒のメリハリがなくなり、夜、寝つけなくなったり眠りが浅くなったり、日中に居眠りやぼんやりすることも多くなります。さらに体内リズムが前倒しになりやすく、極端に早寝早起きになってしまうのも高齢者の睡眠の特徴です」
またアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症がある場合は、より体内時計の振幅が小さくなり、不眠や中途覚醒などの睡眠障害が起きやすくなるという。
「これに加えて、高齢者は日中の活動量が少ない。身体疾患や認知症などがあれば、家の中に引きこもりがちになり、さらに運動量が減ります。また、まぶしいのが苦手なので日中は遮光をし、夜は足元が危ないので照明で家中を明るく照らしたりします。体内時計は日中、とくに午前中に浴びる光の量と運動量に大きく影響されるので、このような生活がよけいに体内時計のリズムを崩し、睡眠障害を助長するのです」
では、高齢者のよい睡眠のために、どんなことを心掛ければよいのだろう。