「映画は大映」というキャッチフレーズが巷を駆け抜けた時代があった。大映は、第2次世界大戦の戦時統制下、複数の映画会社が統合するかたちで1942年に設立された。戦後は、黒澤明監督の『羅生門』がヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞。大映の快進撃が始まった。
溝口健二、市川崑、増村保造など名匠と呼ばれる監督たちがメガホンをとり、市川雷蔵や勝新太郎、長谷川一夫といった銀幕スターを多数抱えた。一方、新しい時代の女性を象徴するような女優たちも綺羅星のごとく揃っていた。
大映創立75周年にあたる今年、女優をクローズアップした48作品を一挙公開する『大映女優祭(12月9日~1月12日)』が開催される。企画の構成から作品の選定までを担当した、株式会社KADOKAWAの原田就氏は次のように語る。
「上映するのは、まだまだ男性社会だった1950年代から70年代初頭の作品ですが、大映の女優さんたちは“強い女性”をたくさん演じています。男に媚びなかったり、人生を自力で切り拓いたりする姿が印象的な作品が多い。そのため映画祭のサブタイトルを『その女たちは凛として、逞しい』と付けました」
男を翻弄するヴァンプ(妖婦)女優No.1の京マチ子。ミス日本出身で世紀の美女と言われた山本富士子。増村保造監督との名コンビで一世を風靡した若尾文子。この三大女優を中心に、男性ばかりでなく多くの映画ファンを虜にした大映女優の姿は今見ても古さを感じさせない。
「作品をリアルタイムで観た世代ばかりでなく、もっと若い世代に大映女優の素晴らしさを知ってもらいたい。今回の映画祭にはそうした思いも込めています」(原田氏)