中国には政府直属の学術研究機関があり、社会科学系・人文科学系の研究所を約30運営している。地域情勢を専門にする研究所のうち、単独で国名を冠するのは米国、台湾、日本のみ。1981年に設立されたという「日本研究所」はいま、日本をどう見ているのか。
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天安門広場から北北東3kmの方向に「中国社会科学院日本研究所」は存在する。「中国社会科学院」は国務院(政府)直属の機関で、中国最高峰のシンクタンク。「哲学および社会科学研究の最高学術機構」と位置づけられており、その権威は北京大学や清華大学よりも上位にある。つまり同研究所の研究内容は、中国政府および中国人の「対日観」の根幹と言えるのだ。
研究結果はホームページで公開されており、日本に関する時事コラムや論文が並んでいる(一部日本語版もある)。執筆陣の多くは「環球時報」などの主要メディアでオピニオン記事を執筆しているようだ。
日本社会の現状について淡々と解説する論考が多いが、学術研究の権威が書いたとは思えないような、悪意に満ちた表現も随所で目に入る。たとえば、「中等国家こそ日本の歴史的常態」と題されたコラムにこんな記述があった。
《国土は世界62位、人口は11位でしかない日本には「中小国家の運命」しかないのである。これは歴史的な運命である》(《》内は抄訳。以下同)
《アヘン戦争以後の100年の間、日本が中国より優位に立っていたのは一瞬の線香花火のようなものであり、「異常事態」に過ぎない》