企業が賃上げをしない一方、建設、飲食、運送、医療、介護などの業界では人手不足が深刻だ。逆に、人が余っている業界のひとつ、銀行では、メガバンクが次々と人員と業務量の削減を発表した。経営コンサルタントの大前研一氏が、名目賃金が20年にわたって下がり続けている日本の雇用環境を打ち破るために、雇用ルールの変更を提案する。
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人余りのトピックスの一つに、三越伊勢丹ホールディングスの早期退職制度の見直しがある。早期退職の対象を50歳から48歳に引き下げるとともに、退職金を部長級は最大5000万円上乗せし、課長級は最大で倍増させて、バブル期に大量入社した総合職を中心に管理職の早期退職を促し、高止まりしている人件費の圧縮を図るという。
だが、この制度だと、会社としては最も残ってほしい人材が先に退職する。なぜなら、そういう人材は他社から引く手あまたで、のし紙を付けて再就職の斡旋をしているようなものだからである。逆に、他社で使いものにならない人は、今いる会社にしがみつくしかない。したがって、会社はますます衰退していくことになる。
だが、三越伊勢丹ホールディングスは、そこまでしてでも辞めさせたいということだ。なぜか? 日本の場合、従業員を簡単には解雇できないからである。
そもそも百貨店業界は、もはや斜陽どころか“死に体”である。なぜなら、eコマースが拡大し、ゾゾタウンやバイマなどがますます成長しているからだ。
たとえばバイマの場合、エスクローで海外の商品が「現地価格+10%+送料」で手に入る。そういう時代に百貨店は、海外の何倍もの値段でバイマと同じ商品を売っているのだから、売れるはずがないだろう。平日に百貨店の店内を歩くと、客よりも店員の数のほうが多い。もはや百貨店は業態的に終わっているのだ。