東京オリンピックが開かれる2020年ごろをめどに、羽田空港への飛行経路が変更されるという。新しい経路では新宿から渋谷、麻布、恵比寿、大井町の上空を羽田に着陸する航空機が通過することになる。その便数は1時間に30便。好天時の15時から19時だから、完全に日中の生活時間だ。
この進入路の変更により、直下エリアの不動産価値にどのような影響が及ぶのだろうか? 住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。
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羽田空港の進入路見直しが提起されたのは数年前だ。私も何度かこの件に関して質問されたことがある。
「マンションの資産価値が下がりませんか?」
私はいつも次のように答えていた。
「室内にいてうるさく感じるようなら影響しますが、そうでない場合はあまり関係がありません。特に今のマンションは二重サッシなど防音機能が優れているので、ほとんど関係ないのではないかと思います。また、実際にそうなってみないとどれくらいうるさいのか分かりませんから」
最近、この件に関する質問が多くなってきたので、自分でも詳しく調べてみた。その結果、少しだけ見解を変更することにした。
結論から言えば、資産価値にマイナスの影響を受けるマンションは一定数ありそうだ。また、戸建て住宅についてはそれなりの悪影響が出るだろう。
私は航空機の進入路の直下に暮らしたことがある。その経験から、影響の有無を決める境目は60デシベルだと考えている。60デシベルというのは「一般的な会話」レベルだとされる。言い換えれば、近くで誰かが話しているレベルの騒音。会話をしていれば相手の話声などほぼ気にならないが、聞きたくもない声だとかなりうるさいはずだ。
「幹線道路の沿線の整備に関する法律(1970年)」による「沿道整備要件路指定要件」によると、その基準は「夜間騒音65デシベル超または昼間騒音70デシベル超」となっている。これは私から見ると、わりあい緩めの基準だと思う。
「羽田空港のこれから」というオフィシャルページでは、今回の進入路変更における環境への影響などについて図版を交えて様々に解説している。気になるのは、進入路を示した図版を拡大して見ることができないところだ。これは意図的と取られても仕方がない。
ただ、騒音のレベルについては一応の記載はある。