芸能

『明日の約束』で母演じる手塚理美の鬼の形相は実に高度な技

番組公式HPより

 印象は地味だが関係者とコアな視聴者の評価は高い佳作、そんなドラマが火曜の夜に放送されている。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * *  *
 上野の森美術館で開催中の「怖い絵展」が最大3時間半待ちと空前の人気とか。一方、テレビの中にも傑出した「怖いドラマ」があります。ゾッとする回数ではピカ一と言えそうな作品が『明日の約束』(フジテレビ系火曜午後9時)。

 主人公のスクールカウンセラー・藍沢日向(井上真央)を軸に、生徒・吉岡圭吾(遠藤健慎)の謎の死をめぐって想像を絶する人間関係が浮かび上がってくる、ヒューマンサスペンス。中でも、3人の人物の、怖さの「グラデーション」が際立ちます。

1. 最初から怖い人

2. だんだんに怖くなる人

3. 突如、怖くなる人

 3つの「パターンの違う怖さ」が潜んでいるのです。

1. 最初から怖い人 =  藍沢尚子

「最初から怖い人」とは、主人公・日向の母親である尚子(手塚理美)です。過干渉でヒステリック。ささいなきっかけで突如、鬼の形相になり娘を怒鳴る。それがあまりの迫力で怒りの風圧を感じ、画面のこちら側にいる視聴者までビクっとするほど。

 瞬間的に強烈な怒りを爆発させるような演技は、役者としても非常に難しいはず。自分の中で怒りを高めてマグマを充満させ、ギリギリのところまで膨らませて一気に噴出させるのですから。実に高度な技であり、役者としてとことん気持ちが入っていないとできない表現でしょう。

 演じている手塚さんご本人も、「自宅に帰って自分に戻るとガクッと来て、全身がだるくなる感じです。そのぐらい、気持ちが全部乗っていないと、この役は出来ません」とインタビューで語っているほどの狂気的キャラクター。すでに視聴者は、尚子が必ずどこかで怒り始めることを察知しています。だから、静かで穏やかなシーンこそ、不気味。爆発する怒りを予感してしまうからです。

 怖いのは、爆発する感情だけではありません。セリフも怖い。

「ママに隠れてこそこそ恋人作って。そんなことやってるから偉そうにスクールカウンセラーなんていってて生徒を自殺させちゃうのよ」「あんないい人、あなたには釣り合わない」

 娘をずたずたに傷つけるコトバ。怖いものは、まだあります。「明日の約束」という過去の日記ノートの存在です。幼い娘に対して母が記した、文字が並んでいます。

「ママがいいと思ったお友達以外と遊ばない」
「読む本もおもちゃもお友達も全部ママが選んであげる」
「ママに口ごたえしない」
「ママが怒った時はすぐにごめんなさいという」

 それを「明日の約束」と称して、「ママは日向のことが大好きです」と結ぶエゴ。恐ろしい毒親の支配力。そんな毒母と、日向は大人になっても一緒に暮らし続ける。なぜなのか。傷つけられる相手と離れて、家を出ればいいのに……と素朴に疑問が浮かぶのですが、次第に理由が明かされていきます。

 母は娘をかばおうと転落し大けがを負い手が不自由。そうした過去の事実が、呪縛となって娘の中に潜んでいることが見えてきます。第8話ではやっとのことで、「私はお母さんの所有物じゃない」と母へ気持ちをぶつけた日向。結末へ向かって、二人の関係の緊張度は最高潮になっていく……。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン