高血圧対策の筆頭は「減塩」とされている。高齢者の食卓に薄味のメニューが並び、味わいのなさに「食べる喜び」を失いつつも、「健康のためなら」と我慢を続ける人も少なくないだろう。これは「血圧は塩分によって上がっている可能性が高い」という過去の研究をもとに「塩分」が目の敵にされてきたからだ。
だが実際には、味覚を犠牲にして減塩食を続けても、血圧が下がらない人もいる。中には、減塩したのに血圧が上がる人もいる。塩分が原因だったら、この現象は説明がつかない。
実は、塩分が高血圧をもたらす「真犯人」であるかどうかは、医療関係者の間でいまだ議論が続いている重大なテーマだ。
そこでいま、新たな理論が注目を集めている。『脳梗塞・心筋梗塞は予知できる』の著者で、循環器に詳しい真島消化器クリニック院長の真島康雄医師は、「高血圧と塩に直接の関係はありません」と明言する。
「高血圧をもたらすのは塩分ではなく、血管に溜まったプラークです。プラークとは脂肪の塊のことで、日本語では『粥腫(じゅくしゅ)』と呼ばれ、その名の通りお粥のようにドロドロしています。これが溜まって血管の内側が狭くなるから、そこを流れる血液の圧力が高まる。実にシンプルな理屈です。塩分よりも、脂肪分や糖分を口にしないことで、血管中にプラークを作らないほうが重要です」(真島医師)