人を殺しても一定期間逃げ切れば犯人の罪は問われない。かつて日本の法律はそう定めていた。犯人逮捕に至らず時効を迎えた凶悪犯罪は少なくない。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が語る。
「何年経過しようが犯罪被害者遺族の苦しみが癒えることはありません。2007年には、警察からの上限300万円に遺族などが積み増せる懸賞広告が始まりました。凶悪犯罪者を許すべきでないという世論が高まり、2010年には、1995年4月27日以降に発生した殺人や強盗殺人などの時効が廃止されました」
以来、発生から何年経過しようと犯人が見つかれば逮捕・起訴が可能となった。
「捜査のノウハウや資器材、科学捜査の技術などは日進月歩です。DNA鑑定なども飛躍的に進歩しています。何年も前に発生した犯罪であっても犯人のDNAが残っていれば別件で逮捕された人間のものと照合して逮捕に結びつくケースも増えています。そうした捜査技術の進歩も時効廃止を可能にした一因といえるでしょう」(小川氏)
しかし、懸命の捜査にもかかわらず犯人逮捕に至っていない凶悪犯罪が存在するのも事実だ。
昨年起きた殺人や強盗などの凶悪犯罪を見ると、認知件数は5130。対して検挙件数は4435にとどまり、695件が未解決のままだ。犯人はまだ刑務所以外のどこかにいる。