2017年、ビール系出荷量(大手5社、課税済み数量)が13年連続でマイナスとなりそうな気配で“ビール離れ”に歯止めがかからない。だが、そんな苦境下でも唯一好調なブランドがある。サッポロビールの「黒ラベル」だ。国内シェア万年4位のサッポロ、しかも発売から40年も経つビールが今なぜ復活しているのか──。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がレポートする。
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もうじき、正月恒例の箱根駅伝がやってくる。そして、この熱戦の合間に挿入されるのが、駅伝をスポンサードしているサッポロビールのCMで、いまやこれも風物詩といっていい。では、そのサッポロビールの本業はどうなのか。
サッポロの看板商品といえば「黒ラベル」と「ヱビス」だ。目下、同社はビール、発泡酒、第3のビールを含めた総市場ではシェア4位だが、ビールだけを取り出すと3位。これは自動車業界の含軽と除軽のシェアに置き換えてみるとわかりやすい。
含軽の場合は軽自動車のシェアが高いメーカーが上位に上がってくるが、除軽では登録車のみなので順位に変動が出てくるからだ。つまり、含軽が総市場、除軽がビールのみの市場だといえる。
さて、その「黒ラベル」と「ヱビス」だが、今年はここまで明暗を分けている。まず「黒ラベル」から見てみよう。「黒ラベル」は一昨年の2015年、実に21年ぶりに前年の販売数量を超え、昨年もプラスで着地。「黒ラベル」復活が本物かどうかは、今年、3年連続で前年超えになるかどうかが1つの判断基準だった。
かつて、サッポロは2位メーカーだったのだが、つまずきは1987年にアサヒビールから「スーパードライ」が出て迷走したことだろう。
1989年に「黒ラベル」ブランドを廃止してしまったのがその一例だ。代わりに「ドラフト」を出した挙句、半年で再び「黒ラベル」を復活させた混乱ぶりで、「黒ラベル」ファンの失望を買った。さらに1990年にはキリンビールから「一番搾り」というヒット商品が生まれたことで、「黒ラベル」は相対的に地盤沈下していったといえる。
さらに、2000年代に入ると別の要因が追い打ちをかけた。2004年秋、突如大株主として登場した米国の投資ファンド、スティール・パートナーズの存在だ。サッポロの高収益事業の不動産セグメントに目をつけたスティールの揺さぶりに、当時の経営陣が対応に追われ、ビールの営業部隊が弱体化したことは否めない。
結局、スティールとの終戦は2010年暮れまでの6年間に及び、この間、2008年には3位の座もサントリーに明け渡してしまった。