高齢者には“死に至る病”となる「肺炎」。「毎日の生活習慣」を変えることでそのリスクを回避するアプローチが、注目を集めている。脳出血で倒れて寝たきりの70代の妻を自宅で介護している70代男性はこういう。
「少し前まで、妻が誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返すことが悩みでした。その度に病院に連れていかなければならないし、食事の介助も気が気じゃなかった。それが、私のかかりつけの歯科医にすすめられた“食前の歯磨き”をやるようになってからというもの、誤嚥性肺炎を起こさなくなったんです」
2011年に脳血管障害を抜いて、「肺炎」が日本人の死因の第3位となった。2016年度の人口動態統計によれば、肺炎による死亡者(11万9300人)の97%以上を65歳以上の高齢者が占めている。
そうした高齢者の肺炎の70%以上が「誤嚥性肺炎」だとされる。細菌が付着した飲食物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」によって引き起こされる肺炎だ。米山歯科クリニック院長の米山武義氏が解説する。
「歳をとると飲み込む力に加え咀嚼力も弱まり、食べ物を細かく噛み砕けなくなる。また、飲食物を飲み込む際に、胃につながる食道が開き、肺につながる気道が閉じる『嚥下反射』も低下します。細かく噛み砕けなかった食べ物は飲み込みにくい上に、嚥下反射の低下で気道に入りやすくなる。しかも高齢者は気道内の異物を吐き出そうとする『咳反射』の力も弱いため、細菌とともに飲食物がそのまま肺に入ることにより肺炎を起こしてしまう」
歯科医の米山氏がこの病気に注目するのは、高齢者にとって危険な誤嚥性肺炎を「歯磨き」によって予防できる可能性があるからだ。